読書尚友

A reading room in Nagoya

2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

101 セリーヌ「夜の果ての旅」

セリーヌ「夜の果ての旅」生田耕作・大槻鉄男訳 中央公論社 昭和39年 陽気な心象自伝。おもしろい。情熱的に生きる苦しみと愚かさが描かれる。トロツキーは泣き笑いしつつ読んだ、とされる。ヘンリー・ミラー、ロラン・バルトが高く評価。サルトルの「嘔吐」…

102 マルクス・アウレーリウス「自省録」

「自省録」神谷恵美子訳 岩波文庫 マッカーサーが日本の歴史上最良の指導者、という結論に至った。誰かに否定してもらいたいものである。・・・マッカーサー以上の人物の旅行記を思い出した。マルクス・アウレーリウス帝「自省録」。第1章は北境のゲルマン…

103 マッカーサーの二千日

袖井林二郎「マッカーサーの二千日」中公文庫 1976年 マッカーサー自身の「マッカーサー回想記」は読んでいない。コロナ禍が終わったらさしかえたい。素顔を見せない人。しかし、的確に行動し、発言している。 「アイ・シャル・リターン」フィリピン撤退時。…

104 チャーチル「わが半生」

W.チャーチル 中村祐吉訳「わが半生」角川文庫 昭和40年 Winston Churchill My Early Life 旅、悲嘆にくれる杜甫の旅、船酔いで半死半生勝海舟の旅、チャーチルの旅は・・ 訳がいいのか、読んでいてとにかく楽しい。茶色くなった文庫本、記憶にあるのは南ア…

105 旅上 萩原朔太郎

旅上 萩原朔太郎 ふらんすへ行きたしと思へども ふらんすはあまりに遠し せめて新しき背広をきて きままなる旅にいでてみん。 汽車が山道をゆくとき みづいろの窓によりかかりて われひとりうれしきことを思はむ 五月の朝のしののめ うら若草のもえいづる心…

106 勝海舟

海舟による咸臨丸のスケッチ 中山行雄編「勝海舟」旺文社 1983年 海舟自身の「海舟座談」も興味津々ではあるが老境の傲慢さ、鼻息の粗い話しぶりが良くないのでこの本。多彩な証言を良く編集。 黒船が浦賀沖に現れたのは1853年 条約批准で咸臨丸がサンフラン…

107 杜詩

杜甫「杜詩」岩波文庫 旅夜書懐 杜甫 細草微風岸 危檣獨夜舟 星垂平野潤 月湧大江流 名豈文章著 官應老病休 飄飄何所似 天地一砂鴎 旅夜懐を書す 細草微風の岸 危檣獨夜の舟 星垂れて平野潤く 月湧きて大江流る 名豈に文章に著われんや 官は應に老病に休すべ…

108 放哉 尾崎放哉集 [大空]

萩原井泉水編「尾崎放哉集 大空」春秋社 昭和56年 追つかけて追ひ付いた風の中 お粥煮えてくる音の鍋ぶた 井戸のほとりがぬれて居る夕風 足のうら洗へば白くなる 入れものが無い両手で受ける せきをしてもひとり 働きに行く人ばかりの電車 ここまで来てしま…

109 仮名手本忠臣蔵 八段目 道行旅路の嫁入

6世歌右衛門の戸無瀬 中村松江の小浪 国立劇場十二月歌舞伎上演台本 竹田出雲 三好松洛 並木千柳 作 「仮名手本忠臣蔵」 八段目 道行旅路の嫁入 昭和49年12月 国立劇場 吉良上野介の指示で働いていた大名は二人いた。浅野内匠頭と桃井若狭之助。ふたり…

110 樋口一葉 たけくらべ

樋口一葉「たけくらべ」青空文庫 冒頭 廻れば大門の見返り柳いと長けれど、お齒ぐろ溝に燈火(ともしび)うつる三階の騷ぎも手に取る如く、明けくれなしの車の行來(ゆきゝ)にはかり知られぬ全盛をうらなひて、大音寺前(だいおんじまへ)と名は佛くさけれど、さ…

111 アムンセン 「南極点」

ロアール・アムンセン 中田修訳「南極点」朝日文庫 1994年 アムンゼンの南極への冒険の本を読んだのは小学生の頃。記憶によれば…イギリスのスコット隊との競争で日本からも参加。白瀬中尉が南極をめざした。アムンゼンは南極点に達したのち帰路に食料を残し…

112 芭蕉 奥のほそ道

萩原恭男校注「芭蕉 おくのほそ道」岩波文庫 1979年 月日は百代の過客にして、行きかふ年も又旅人也。 千住にて舟をあがれば、前途三千里のおもひ胸にふさがりて、幻のちまたに離別の泪をそそぐ。 定年後岩波文庫入手。芭蕉の文がそのまま読めるのが有難い。…

113 東海道中膝栗毛

十返舎一九「東海道中膝栗毛」文化丙寅仲夏 喜三二書干芍薬亭 著者 三田村鳶魚 評釈江戸文學叢書 滑稽本名作集 昭和11年 大日本雄辨會講談社 立派な装丁 「旧観帳」「浮世風呂」を含み900頁 丁寧な概説、解題あり。 「源氏物語」でふれたように平安時代の文…

114「ひきがえるの冒険」 グレアム

ケネス・グレアム 「ひきがえるの冒険」講談社 少年少女世界文学全集 昭和36年 Kenneth Grahame 題名は誤訳 The Wind in the Willows やなぎにそよぐ風 講談社の少年少女世界文学全集 毎月一冊配本。「ああ無情」「家なき子」「フランダースの犬」「ピノキオ…

115 東京に暮らす LIVING IN TOKYO

キャサリン・サンソム「LIVING IN TOKYO 東京に暮らす 1928-1936」岩波文庫 「イギリスの外交官夫人。Katharine Sanson (1883-1981) の昭和初期の東京の街と人々の暮らし、印象記。ほのぼのとした人間観察。」と紹介文にはあるが、それ以上に大戦直前に大事…

116 サザエさん 旅あるき

長谷川町子「サザエさん 旅あるき」朝日新聞出版 2016年 買い出しも「小さな旅」のひとつでした の章 善意で 率直 正直で 苦労の連続 サザエさんの笑い 悪意あり ウソばっかり ラクして大儲け(ねらって貧乏な)イマドキの笑い

117 辻元清美「永田町航海記」

辻元清美「永田町航海記」第三書館 1998 自民党本部九階のコロッケ定食はうまい の章 なんと400円。安いよね。コロッケはカラッと揚げられていて、じゃがいもの甘みもほんのりと感じられる。・・・せっかく本部まで来たのだから 四階の幹事長室を覗く。加藤…

118 江藤恭二 「ドイツのこころ」

江藤恭二「ドイツのこころ ワイマール精神の探求」講談社現代新書 1980 江藤氏は海軍兵学校出身。海軍兵学校は終戦で廃校となり東大へ。名古屋大学教育学部教授。規律を重んじる豪放磊落な方、とまわりからは思われていたし、「パンクチュアルに」(時間厳守…

119 獅子文六 「海軍」

戦時中で「海軍」は本名 岩田豊雄として発表。獅子文六全集 第16巻 朝日新聞社 昭和43年 「海軍」執筆は昭和17年。 獅子文六 北杜夫の紹介文「獅子氏の作品はわが国に少ない本当の大人の小説である。品がよく、知的なユーモアで多数の読者を喜ばせ、感動させ…

120 「戦艦大和ノ最期」 吉田 満

艦内スピーカー「郵便物ノ締切ハ1000(十時)」気進マザルモ励マシ合イ、家二シタタメントス 遺書ノ筆ノ進ミ難キヨ サレドワガ書ク一文字ヲモ待チ給ウ人ノ心二、報イザルベカラズ 母ガ嘆キヲ如何二スベキ」 若き日 北海道の牧場で働いていた。牛300頭…

121 「どくとるマンボウ航海記」北杜夫

中学3年のころ、友人の F 君からもらった本。長時間通学で電車に揺られていたが、車中で声にだして笑ってしまって、座っていた斜め前の女の人がうれしそうな顔でこちらを見上げていた光景が記憶に残っている。新鮮でユーモアあり。しかし、今となると、どん…

122 小田実 「何でも見てやろう」

小田実「何でも見てやろう」河出書房新社 昭和37年 読んだのは中学生のころ。ペーパーバックという装丁が新鮮であった。今でも新鮮。 巻頭の写真 古代遺跡ではなくムッソリーニの未完成オリンピック競技場の残骸 今 東京オリンピック開催中。ムッソリーニは…

123 西尾実「花鏡の問題」能楽全書

西尾實「花鏡の問題」能楽全書 第1巻 創元社昭和18年 この文章において西尾が提示しているのは、「風姿花伝」の構造的把握法である。 世阿弥「花伝」は「風姿花伝」を含みつつ二十巻ほど。それぞれを読み耽ってしまうが、西尾は全体像を示してくれる。「花…

124 三宅晶子「歌舞能の確立と展開」

三宅晶子「歌舞能の確立と展開」ぺりかん社 2001 檜書店の現代語訳の謡本「対訳でたのしむ」シリーズ、薄いパンフであるがとてもいいシリーズの筆者。大学教授であるがしなやかな文体で簡潔な叙述。 能を聴きに行く時は、例えば演目が「隅田川」であれば「対…

125 芸能名言辞典

諏訪春雄編著「芸能名言辞典」東京書籍 平成7年 (歌舞伎、文楽、能・狂言、日本舞踊、邦楽、民謡)×(芸・演技、修業・稽古、師弟、名人、心、老若、男女、作品・舞台、伝統と創造、聴衆・批評)。703頁。十分な分量、良い編集。各界の名手が真剣率直。…

126 前田允 ヌーヴェルダンス横断

ローザス「アクターランド」 前田教授はコンテンポラリー・バレエをフランス流にヌーヴェルダンスとよぶ。 それは今までの言語芸術に代わって、我々の身体を媒体とする表現芸術である。上掲の作品は 現代の職場、ビジネススーツにハイヒールの閉鎖空間の打破…

127 モーリス・ベジャール回想録 誰の人生か

La vie de qui? Maurice Bejart 前田允訳 劇書房 1999 舞台上の生 舞踏 聖者と娼婦の間で、世界と神の間で、我々のダンスは展開する。ニーチェ この本はベジャール独特の「生」の追求。創造的表現者である彼の素顔。ベジャールの舞踊は新しい宗教であり、見…