読書尚友

A reading room in Nagoya

131 維摩経

ゆいまきょう

1999年7月「維摩経サンスクリット原本写本が発見された。2011年植木雅俊訳岩波書店

聖徳太子が日本人の信仰の方向性として、「維摩経」「Srimala経」(経名をこのパソコンでは変換できず)「法華経」を選択。内容としては、仏教信仰の国とする。しかし出家、僧は出過ぎないように。男女平等。

植木訳は平易。サンスクリット語への注釈でちょっと厚目の本だが、中身はコンパクト。

世俗の生活を(在家)していても囚われをすてれば仏教の理想は実現できる。山中の広壮な寺院内にこもる出家を批判。

物語じたて。天女が花びらをまき 菩薩には付着せず、声聞たちにはくっついてはなれない。「出家者にふさわしくない」として取り払おうとするシャーリープトラに天女は「あなたに執着する心があるから離れない」。シャーリープトラ「あなたはどうして女身を転じて男身に転じないのか?」と問うが、我が身を女身に変えられ、うろたえる。天女「すべての女も同じ」。それは苦悩する人々への救済の入り口であることが示される。

法華経」でがっかりするのは、せっかちな布教指令と女性蔑視。男身への変換が当然視されている。「維摩経」の方が平等思想。インド、中国の思想・文化導入にあたり 男尊女卑要素を聖徳太子が批判しているのは 彼が人間性へのすぐれた洞察の持ち主であったことを示している。