読書尚友

A reading room in Nagoya

110 樋口一葉 たけくらべ

樋口一葉たけくらべ青空文庫

冒頭

廻れば大門の見返り柳いと長けれど、お齒ぐろ溝に燈火(ともしび)うつる三階の騷ぎも手に取る如く、明けくれなしの車の行來(ゆきゝ)にはかり知られぬ全盛をうらなひて、大音寺前(だいおんじまへ)と名は佛くさけれど、さりとは陽氣の町と住みたる人の申き、

第10章

春は櫻の賑ひよりかけて、なき玉菊が燈籠の頃、つゞいて秋の新仁和賀には十分間に車の飛ぶ事此通りのみにて七十五輛と數へしも、二の替りさへいつしか過ぎて、赤蜻蛉田圃に乱るれば横堀に鶉(うづら)なく頃も近づきぬ、朝夕の秋風身にしみ渡りて上清(じやうせい)が店の蚊遣香懷爐灰に座をゆづり、

 

ここ数日旅行記をあれこれ見返していると 乗り物 が気になっていました。馬を曳く少年から短冊を請われ驚く芭蕉。100ぴきのわんちゃんに連れられて南極点に到達したアムンゼン。思い浮かんだのは、瀬戸内海沿いから人力車で山越え、山陰松江にぬけたラフカディオ・ハーン小泉八雲の旅。ハーンは来日初日に横浜で人力車に乗り、うれしそう。松江の生活でも宍道湖の夕日を見に人力車をとばしたという。小泉八雲の作品はきっちり読んでないので書けませんが・・。人力車の音が聞こえてくる作品 樋口一葉たけくらべ」。私には人力車の音が大きく聞こえます。吉原通いの人力車、一葉の小さな雑貨屋さんの近くを10分間で75台の轟音通過。一葉理解、経済状態分析。維新の激動の時代、一家を女手ひとつで支えるための荒物屋開業。吉原遊郭近傍。仕入れ:箒であっても遊郭に上物を納めたら高利?江戸時代からの業者が納入していて新規参入の一葉は大店、寺とかへの出入りは無理か。 顧客:美登利さんのような、売れっ子芸者の見習い少女がぱあっと上物をまとめ買い? 仮説 一葉の営業可能なもので比較優位があったの、芸者さんの恋文代筆 江戸時代の名称としては文売り。樋口一葉がラブレターを代筆してくれるなら私も頼みたい。一葉の小さなお店の売上は吉原の繁栄の二次関連波及効果。ほとんど売れず、やがて文売りに特化してゆく、というのが私の推測。一葉が恋文代筆の跡を残すはずがありませんが、明治期、国勢調査で芸者は東京で一万人、非公認、酌婦等まで含めると8万人。その周辺のかなりの人口を養っていた。吉原門前町のお店。人力車の往来が多い方が一葉のお店の売上も良かったと思われます。

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文芸春秋」2022年1月号

美登里や信如の中に一葉がいる。なるほど。