国立劇場十二月歌舞伎上演台本 竹田出雲 三好松洛 並木千柳 作 「仮名手本忠臣蔵」 八段目 道行旅路の嫁入 昭和49年12月 国立劇場
吉良上野介の指示で働いていた大名は二人いた。浅野内匠頭と桃井若狭之助。ふたりとも吉良への怒りは限界に。桃井の殿様の家老は加古川本蔵、浅野の家老は大石内蔵助。本蔵の娘 小浪と大石の長男主税はいいなずけ、フィアンセでありました。相思相愛。
桃井の殿様は本蔵に吉良を討つことを告げる。本蔵は名刀を殿に用意する一方で吉良に贈賄。吉良の桃井の殿様への態度は急変、いじめは浅野に集中。
江戸城 松の廊下、吉良に斬りかかる浅野の殿様をうしろから抱えて止めたのが加古川本蔵。それで浅野は本懐を遂げることができなかった。赤穂浪士にとっては加古川本蔵は憎い存在となる。吉良邸討入、主税は総大将、秘かに準備進行。死を覚悟する大石側は婚礼をすすめることはできない。小浪の想いはつのる。母の戸無瀬は義理の母、後妻。義理であればこそ おろそかにはできない、小浪の思いは実現してやりたい。山科の大石宅へ二人で向かう。東海道の道行。
八段目
富士の遠見の杉並木
上手に文楽座連中並び
♪ 娘小浪がいひなずけ たのみも取らずそのままに振り捨てられし物思い
♪ 母の思いは山科の聟の力弥を力にて、住家へ押して嫁入りも、世にありなしの義理遠慮、腰元連れず乗物も止めて親子の二人づれ
・・・
♪ 母の心もいそいそと
♪ 二世の盃済んでのち、閨の睦言さざめ言、
私はこの12月公演、3回通い、2段目松切 本蔵が立派な松の枝(その都度新しい大きな盆栽)を真剣で斬り飛ばすのを3回見ました。文楽の三味線の音色が絶品。武智鉄二が雑誌「演劇界」1月号の評論「特筆しなければならないのは、豊沢寶緑の三味線。ずいぶん手短に弾いていたが、自然と教養がにじみ出た。戸無瀬が二重から下へおりるまでの間の合の手が絶品で、歌右衛門の演技を大きく助けていた。」あんな三味線の音、はじめて聴きました。それを伴奏の八段目の道行、ようございました。旅行記、各種読めども、この道行が一番の思い出です。
良かった役者は 本蔵の坂東三津五郎。先々代。翌月山口で河豚中毒で死去。最後の舞台。馬も立派、馬よりも馬らしい歌舞伎の馬。