20世紀のメキシコ革命でカトリックは禁教となる。 神父は国外追放。 立ち去らなかった一人の神父の処刑されるまでの物語。 神父たちは居なくなったが、ミサを求める民衆は残っていた。 神々しい聖者の物語ではない。 ウイスキー神父。 のんだくれ。 追手が間近に。 バーの床物陰に隠れるが、ポケットのウイスキーの壜がカチャっと音をたて、見つかり走り出す、とかの話。
「権力と栄光」早川書房 1980年 全集第8巻 タイトルの「権力と栄光」のんだくれ神父の逃亡劇で、誤訳に近い。 原題 The Power and the Glory 定冠詞 the の訳し方であるが、 前回の吉田健一さんのニューヨークで飲んだカクテル
This is the drink for hot weather. これこそ夏の好飲料だ。」 的な使われ方か。
破戒司祭の聖職性がテーマの小説であり、the は神をさししめしている。
権力と訳しては 世俗をさししめしてしまう。
囲みはせばめられ、猟犬と死の賢い力は刻々と追ってきた。 ドライデン
主人公はマリアという女に私生児を生ませるほどの破戒神父。カトリック禁教の国法に対する反逆者であり、教会法にも反逆。自問自答を繰り返す。神に追われ、神に試されているのか。準主役の刑事が執拗に追い、逃亡と追跡のスリリングな展開。メキシコ人とインディアンの混血児の裏切りにより逮捕され、処刑される。
キリスト教文学会に参加していたころ読んだ作品で、周囲には「グリーンはイイね」の初老の人たちが群れていた。それほどでもない の心象の作品。オモシロイとは言えそう。最後の復活の記述をどんな次元で受けとめたらいいのでしょうか。
グレアム・グリーン作品なら「情事の終わり」全集12巻。 友人の英語教師 F さん「セアラがいい」。彼の文学世界最高のヒロイン とのこと。読んで彼の話を聞こうと思っていましたが、お亡くなりになったと伝え聞きました。どうしましょう。