フォルケル「バッハの生涯と芸術」柴田治三郎訳 岩波文庫 1988年
「バッハも挫折を繰り返していた。それを熱烈な天分と熱烈な勤勉さで切り抜けた」
フォルケル
バッハの音楽に神秘を感じるが、やはり人間の作品であろう。そこには幾多の困難が横たわっていたが、バッハは先行する作品に学び、推敲を続け美しい曲を創造とフォルケルは言う。中学生のころから60年間バッハを聴き続けているが、納得のいく指摘である。
「著者フォルケルは ロマン派の人々と対立 バッハ以後の音楽を退廃だと考えた」と訳者柴田氏は指摘する。私も退廃説に同感である。60年間 バッハをそろそろ卒業してロマン派に目覚めねば という漠然たる思いがあったし クラシック音楽というと主にロマン派が演奏され続けているが、私は退廃を感じて、さけてきた。この本ではじめてロマン派は退廃の言葉に接し ほっとした。