読書尚友

A reading room in Nagoya

122 小田実 「何でも見てやろう」

小田実「何でも見てやろう」河出書房新社 昭和37年

読んだのは中学生のころ。ペーパーバックという装丁が新鮮であった。今でも新鮮。

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巻頭の写真 古代遺跡ではなくムッソリーニの未完成オリンピック競技場の残骸

東京オリンピック開催中。ムッソリーニは開催の準備をすすめていた。ソ連の最盛時のモスクワ大会、次の2024中国開催。写真から オリンピックとは何か つわものどもの夢のあと この本は考えさせてくれる。全編、事実に即し、飾らない記述。たとえば、ギリシアのスーニオン岬で筆者は「エーゲ海の日没を見て、帰りはトラックに拾われてアテネに帰る」のであるが、私も個人旅行アテネに行った。現地の日本人経営の観光会社の手配で団体旅行の船に一緒にされ、宝飾お土産コーナーのある船室につめこまれ、目的地の島で帰路を放棄、高速艇でアテネにもどったのでエーゲ海の日没は見なかった。ギリシア悲劇を上演する土地までの交通はタクシーしかなく、5万円と言われやめてしまった。今読み返してみても、小田実の記述は正しく「見る」ことに卓越。読む方の自分が見えてくるのだからすぐれた文章である。