読書尚友

A reading room in Nagoya

121 「どくとるマンボウ航海記」北杜夫

f:id:Balance1950:20210813120921j:plain


中学3年のころ、友人の F 君からもらった本。長時間通学で電車に揺られていたが、車中で声にだして笑ってしまって、座っていた斜め前の女の人がうれしそうな顔でこちらを見上げていた光景が記憶に残っている。新鮮でユーモアあり。しかし、今となると、どんな可笑しさか指摘できない。巧妙な技巧と思われる。海外旅行が高嶺の花、ハワイ航路ぐらいが庶民の夢の時代にヨーロッパへの長期旅行は冒険物語として面白かったのであろうか。北杜夫が船医として旅行する話であるが、この本をくれたF君は医者になったのであり、それも、私から見れば、北杜夫の如く、医師であることばかりに熱中する人種ではなく、よそ事を楽しむために医師となったタイプ。それが50年後の今、この本の話をすると「何も憶えていない」という。幼い日の縁日のおもちゃの如く強いインパクトあるも、跡を残さず かな? 位置づけ、構造理解がむつかしい。凝ったナンセンス系の笑いで、今では色あせた話題が並んでいる?

北杜夫 純文学の作品もその後のエッセーも 良いとは思えない。しかし、中学時代、この本、それは楽しかった。