読書尚友

A reading room in Nagoya

119 獅子文六 「海軍」

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戦時中で「海軍」は本名 岩田豊雄として発表。獅子文六全集  第16巻 朝日新聞社 昭和43年 「海軍」執筆は昭和17年

獅子文六 北杜夫の紹介文「獅子氏の作品はわが国に少ない本当の大人の小説である。品がよく、知的なユーモアで多数の読者を喜ばせ、感動させる。その描く風俗のなんといきいきとし、人物の動きのなんと軽妙なことであろう。」

五代利矢子(NHK司会者)「淡々として軽妙な筆さばきのうちに時代を人間を浮き彫りにしてくれる獅子文六全集に生活の中の輝きを教えられる心地です。「てんやわんや」に人生のおかし味を「娘と私」に家庭の心の交流を発見して力強く思う家庭の人も多い事でしょう。」

わたしは「悦ちゃん」を読み、良かったので「娘と私」「てんやわんや」と読みすすみました。「てんやわんや」は終戦直後、戦犯指定を恐れた作家が四国の田舎町に潜伏移転。そこでのささやかな騒動あれこれ のユーモア小説。獅子文六自身の半分実話。戦後逃げ回らねばならなくなった理由の小説。どんな戦争協力の文学を書いていたのか。戦時の朝日新聞の連載小説はどのようなものか。「海軍」はすぐには入手できなかった。古本屋で獅子文六全集をみつけ、買いました。

静かな物語の進行。言葉すくななやさしい少年のようす。長期連載なれど それだけ。私にはそれだけ。しかし主人公は真珠湾攻撃潜水艦特攻の軍神。朝日新聞の華々しい開戦報道と呼応した連載小説なのでしょう。

獅子文六 今では忘れ去られた小説家。戦時の朝日新聞の連載小説(それが文芸の中心)、戦後のNHKドラマ(それが文芸の中心)を支えた逸材。