著者 三田村鳶魚 評釈江戸文學叢書 滑稽本名作集 昭和11年 大日本雄辨會講談社
立派な装丁 「旧観帳」「浮世風呂」を含み900頁 丁寧な概説、解題あり。
「源氏物語」でふれたように平安時代の文学も江戸期を経て誤解を含み、浅い理解となった。霧の朝の別れぎわ、侍女の手を握った光源氏は朝顔の花を手折る・・は今では別の名前の花、つる草ではない。紫色も今の江戸紫色ではない・・。江戸の文芸も現代からは捉えがたくなっている。講談社、岩波書店で活字となり出版されたものを速読、わかった気になっていた自分を自覚する今日このごろである。
具体的には・・
東海道膝栗毛 五編 追加 伊勢参宮
伊勢の山田此の町十二郷ありて、人家九千軒ばかり。商家甍をならべ。各々質素の荘厳こまやかにして。神都の風俗おのずから備わり。柔和悉鎮の光景は。余國に異なり。参宮の旅人たえまなく。繁昌さらにいふばかりなし。弥次郎喜多八は此の入口にいたると。両側家ごとに御師の名を板にかきつけ。
丁寧な旅行ガイド本 旅館の利用法等 弥次郎喜多八の目から行動からわかるようになっている。御師(ごし、地元ではおんし)、伊勢神宮案内の神職者 宿ごとにいることがわかる。旅行者も講で。伊勢講、みんなでお金を出し合い順番に伊勢に行く信仰あるいは金融組織。神道信仰は活気があって盛ん。地域の人間関係濃厚。挿絵からして豪華旅行。伊勢山田の町並みも荘厳 とある。
ゲハハと笑おうと手にとったが、美しい信仰深い国が現れた。