読書尚友

A reading room in Nagoya

114「ひきがえるの冒険」 グレアム

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ケネス・グレアム 「ひきがえるの冒険」講談社 少年少女世界文学全集 昭和36年

Kenneth Grahame  題名は誤訳 The Wind in the Willows  やなぎにそよぐ風

講談社の少年少女世界文学全集 毎月一冊配本。「ああ無情」「家なき子」「フランダースの犬」「ピノキオ」「ロビンソン漂流記」「小公子」「海底二万里」など記憶に残っています。はじめは母に読んでもらって、その後自分で読めるようになって。ふたつ上の姉は自分で読めるのでどんどん先へ。母の朗読は、それでも30分くらいは読んでくれたでしょうか。「ひきがえるの冒険」は自分で読んだ最初の作品。同じ一冊に、「ふしぎの国のアリス」「メアリー・ポピンズ」「山の伝書鳩」がはいっており、姉は不思議の国のアリスをサッサと読んだように記憶。最初から私の読書傾向はできていたようです。聖書といっても、みんなが読む「創世記」新約のパウロの言葉ではなく旧約の「伝道の書」、「万葉集」ではなく「古今集」、「法華経」よりは「維摩経」。

「ひきがえるの冒険」すばらしい。友とは何をしてくれる人か、旅の喜びは何か、教えてくれている。「ひきがえるの冒険」であっても、私の読みは、ひきがえるの言動騒動は捨象。ゴミ。ねずみともぐらの友情だけを読む。挿絵は冒険旅行からもどったもぐらの家の場面。家に帰るのが旅の最大の喜び。旅行番組、旅行記多けれど帰宅のやすらぎを描いているこの場面は秀逸。帰着、もぐらはねずみを自宅にさそう。

「使いふるした、みすぼらしい家具類を見ると、もぐらは、がっかりといすに身をなげて、顔をかかえた。「あーあ、ねずみくん、ぼくはこんなばんに、こんななさけないところに、きみをつれてくるなんて。きみは、いまごろはもう川岸に帰ってさ、なにもかもりっぱにととのっている家で、足のさきをあたためていられたのにねえ。」ねずみ「なんてすばらしい、かわいいうちだろう。なんでもそろっていて、・・・今夜はゆかいにやろうぜ。まず火をおこさなけりゃね」