読書尚友

A reading room in Nagoya

128 風姿花伝

能楽の宗家に伝わる秘伝。明治後期旧藩華族から流出。明治42年に吉田東伍博士が能楽会から出版。原本は関東大震災で全巻消失。世阿弥の書き残した能楽の家の生き残り戦略、技術論、人財育成論。今では芸術論として読まれているが、能楽の素人むけの書物ではない。

(A群)一行でも身につければ 輝いてしまうから  芸術の秘伝。

秘すれば花、秘せざれば花ならず。」

「初心忘るべからず。」

( B 群)舞台に立つ人へ

「心情が声にあらわれ、その美しい声があやとなる。」

「うつぶけば後姿悪し。」

(C 群)全体としては

「時代にあった新作の創作がなければ滅びる」

「他の芸能に手を出してはならない。しかし、詩歌の道にはいそしむべし」

シェイクスピアのように詩で全編を描ききり、話題の新作を出し続けよ と世阿弥は言うのであります。当時、大和猿楽四座、近江など近畿地方に猿楽の座、田楽の座もなど競争が激しかった。観世座棟梁の世阿弥としてはその競争に勝ち抜く道を秘伝として書き残したのでしょう。

私としては「風姿花伝」(諸巻の全体「花伝」)花伝の(C群)の全体戦略が研究され、用いられることを望みたい。能も歌舞伎も新作を美しい日本語で演じてほしいものです。