読書尚友

A reading room in Nagoya

148  吉行淳之介「廃墟の眺め」

1967年 山本容朗 編  吉行淳之介「私の東京物語」所収

毎日のウクライナのニュース。廃墟となった町。やがては復興してゆくのであろう。

その心象風景は 吉行のこの短編小説の如きものとなるのであろうか。戦争で死んでいった知人友人を思い出し、生きている自分。希薄な空気 ひりひりするような感触。

行き交う人の中には満州帰り、ソ連軍に集団暴行された女性もいたのであろう。それが文中の花野美枝子なのである。

5行目~7行目の風景描写で思い出すのは・・ 故郷 大須小の隣の学区栄小学校の校庭を掘ったら高熱で焼き上げたような地層が出てきたという話。80年前のアメリカ軍の名古屋空襲の跡。父の家も母の家も焼かれ、母は夜中逃げまどい、夜明けには本願寺別院の大きな御堂が形を保ったままオレンジ色に燃え続けるのをみんなで見ていたとのこと。本当に綺麗だったそうです。