読書尚友

A reading room in Nagoya

75 R.H.ブライス 「禅と英文学」

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「禅と英文学」第13章 PARADOX

ブライスさん 主著「禅と英文学」

R.H.Bryth  Zen in English literature and Oriental Classics 1942 THE HOKUSEIDOU PRESS

ブライスさんが大事にしていたのは Poetry in every-day life 日々の詩情。具体的には 3B。Bach バッハ 芭蕉  Bible 聖書。Buddhism という見方が多数派かもしれませんが私は聖書と考えます。

長女の春海さんから「父の座右にはいつも聖書がありました」と 聞きました。春海さんというお名前は、戦争直後、平和な日々となったころ、春海さんが生まれたのですが、その日ブライスさんはバッハのあの曲を聴いて感動、瀬戸内の春の海を連想、春海さん命名

主著にも(上掲)神の声の楽譜がのっています。

ブライス家ではどんなバッハ曲が流れていたのか、春海さんに100曲聞いてもらい、よくきいた曲に丸印をつけてもらいました。

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Grammophon社 J.S.BACH CATALOGUE

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何と 8割以上に丸印。傾向というよりバッハ漬け。

同席の荒井良雄先生にも丸印をつけてもらいましたが、こちらは顕著な傾向があり、無伴奏チェロ系好み。先生はバッハに禅の境地をみてみえると解釈。あなたは?

 

ブライスさん 私からみて・・

自由に楽しくユーモラスに日々を楽しみましょう 

詩、禅、それとともにバッハ 聖書の音楽化としてのバッハ

 

ブライス禅(フレンド派キリスト教と融合)の人。自由な境涯。この稿ではその音楽性を指摘。

最晩年、「ハワイに移住したい」これを聞いた鈴木大拙が「とにかく病気が治ってから」と止めたわけです。このあたり、日本が嫌いになったわけではなく、真の禅の人の意向。その境涯は、

御本人も主著第1章で言ってみえる 道元の境地

水鳥の往くも還るも跡たえて

   されども道は忘れざりけり

The water-bird 

    Wanders here and there

       Leaving no trace,

   Yet her path

       She never forgets.    道元の詩(偈) ブライス

 

道元正法眼蔵」の言葉で補足するなら、

 専一辨道 莫帰郷

禅の道に専念する人に故郷はない

 

キリスト者渡辺和子さんが修道女となった時、私物は一切なし。写真1枚だけ。家族の居間での写真。(その部屋に 二・二六事件青年将校乱入、彼女の目の前で父は機関銃で惨殺された)修道の人に故郷はない。

 

ブライスさんの境地 家庭的な暖かみの主旋律もきこえてきます。

家庭でバッハの曲を合奏。

バッハの楽譜が残っています。板紙で裏打ちされている。ていねいな筆跡、しもぶくれの B  はブライスさんの文字(下掲)の特色ではあるが 若い女性(お嬢さん)の精緻な作業か?

 

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ブライス家合奏用楽譜 かな?

たくさんあった楽譜は銀座のバッハ協会に寄付された、と聞いております。

 

追記 ここ3日で多くの方が閲覧にみえました。

ブライスさんを慕う人々でしょうか。

手元の資料を追加。

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