読書尚友

A reading room in Nagoya

16 竹野一雄「C.S.ルイス 歓びの扉」

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竹野一雄「C.S.ルイス 歓びの扉 信仰と想像力の文学世界」岩波書店 2012年

竹野一雄 私の大学院博士課程の恩師である。篤信のキリスト教徒。所属の教会のオルガニスト。布教的言動、それ以前に信仰の話はされなかった。ゼミの食事会は先生がいくつか注文されみんなで分けた。粗食に近いが愉快であった。数年して後輩たちの食事会にも参加したが、そのころは人数が増え、複数テーブルで、ゼミ生が自分たちで注文。大量栄養過剰食べ残しの宴となっていた。竹野ゼミの始まったころのささやかで静かな宴、それは良かったのです。ワイン選びも先生の特技。いつも会えばワインを飲んで2人で話した。南フランスの麦わらクサイようなのがじつに良い飲み心地で、先生も「わかった?」と軽く合図。予期せぬ歓びであった。(歓んで それからが大事 が竹野説)

先生を尊敬する弟子は多いのであり、キリスト教文学会関係の文献を推奨。本はかっちり書かれており、その通り読めばいい本である。

仏教徒というのは寂しくないかい?」という言葉を今思い出した。先生のキリスト教、あるいはルイスのキリスト教は、仲良く 戦う 人々。それも復活を信じて。ルイスはその辺を「スコッチはストレートで飲もう」と言っている。復活をあいまいにする近現代の信仰は水割りのウィスキー。ナルニア物語も最後の戦いを友とともに戦い抜くから爽快。銀座の教文館トマス・アキナス全集を立ち読み、「聖職者も剣を持って戦え」とあった。東京空襲でも爆撃機B29に牧師も搭乗していたのは確実。のべ33000機出撃、のべ30万人が参加ですから・・

ただ、ひとこと書くことにしたのは、この本についても誤りの紹介もあるので・・

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皆さん参照するであろうウィキペディア。本の題名がまちがっている。「副題 信仰と創造の文学世界」。信仰と想像力の文学世界 が正しい。想像力というのが、竹野先生の恩師、学会の泰斗 山形和美教授の 垂直の想像力理論のキーワード。山形教授は筑波大学教授として信仰という言葉を出さなかった。弟子の竹野先生はこの主著の副題として 信仰と想像力 というかっちりした表現を与えた。山形の垂直のベクトルというのが神、信仰を指し示しているのだが、難解となる。この表現で竹野師は山形氏に「継承しました」と宣言している。それを間違えてはイカンのです。竹野先生2018年帰天。山形氏2019年召天。山形先生は2012年のこの本を手にとっているはず。