読書尚友

A reading room in Nagoya

135 小町集 小野小町114首

色見えで移ろふものは世の中の人の心の花にぞありける

男と女の想う心の花は見えないまま移ろう。

人に逢はむつきのなき夜は思ひおきて胸走り火に心焼けを

逢いたい人に逢えぬ夜の情念。

あはれてふ言こそうたて世の中を思ひはなれぬほだしなりけれ

あわれ いとしい という言葉こそ言葉こそ困ったもの。世捨て願望の歌。

長歌も詠ずれば良い気分

あしたづの雲居の中にまじりなばなどいひて失せたる人のあはれなる頃

久かたの 空にたなびく

うき雲の うける我身は 

つゆ草の 露のいのちも

又きえて 思ふことのみ

まろこ菅 繁さぞまさる

あら玉の 行く年つきは

春の日の 花のにほひも

夏の日の 木の下かげも

秋の夜の 月のひかりも

冬の夜の 時雨のおとも

世の中に 恋もわかれも

うき事も つらきもしれる

我身こそ 心にしみて

袖の浦の ひる時なく

哀れなれ かくのみ常に

思ひつつ いきの松原

生たるに ながらの橋の

長らえて 瀬に居たづの

鳴わたり うらこぐ舟の

ぬれ渡る いつか浮世の

くにさみの 我身かけつつ

かけ離れ いつか恋しき

雲の上の 人にあひみて

此世には 思ふことなき

みとはなるべき

 

和歌からすると、今の世にもふつうにいそうなやさしい人。