読書尚友

A reading room in Nagoya

177 子規句集

高浜虚子選「子規句集」岩波文庫 昭和16年

私が選んだ十句

(1)杉高く秋の夕日の茶店かな

明治の散策、旅は高雅。今の旅は外国人で混雑、くどいスウィーツの屋台がぎっしり並んで。

(2)朝顔にわれつつがなきあしたかな 明治23年

(3)日あたりのよき部屋一つ冬籠  明治32年

子規というと病苦の深刻な句が高名であるが たおやかな吟詠もあり。

(4)漱石が来て虚子が来て大三十日

この句集 虚子の編集であるが解説文が一切ない。句だけ。気高く緊迫した人間関係。

(5) 漱石来るべき約あり

   梅活けて君待つ菴の大三十日  明治28年

並でない交友関係が伝わってくる。

(6)秋風の一日何を釣る人ぞ  明治25年

釣り人を見る子規の澄んだ境涯が良い。

(7)古寺に灯のともりたる紅葉かな  明治26年

(8)庭十歩秋風吹かぬ隅もなし  明治29年

(9)三月を此能故に冴え返る  明治27年

感受性に感嘆。能を聴きながら眠ってしまう私とは違う。

(0)行く秋や我に神無し仏無し

気になる句。わからない句というべきか。神、仏とともにあるから(7)(8)(9)の句境にあったのでは?